
ayat1181:えー…このTokyo House Musicに大変な事が起きました…今月のインタビューは東京…いえ、日本のHOUSEシーンを語るには欠かせない超重要人物である高橋透さんにお越し頂いております。高橋さん、本日はよろしくお願いします。
高橋透:はい、どうぞよろしくお願いします。
ayat1181:高橋さんほどのお方に来ていただいて、いろいろニューヨーク時代のお話やラリー・レヴァンさんとのお話をたっぷり伺いたいのですが…サイトの趣旨上すっとんきょうな質問が続きますが…どうもすみません。
高橋透:いえいえ、大丈夫ですよ。よろしくお願いします。
ayat1181:では、まず早速ですが、高橋さんがDJを始める事になったきっかけを教えてください。
高橋透:そうですね、僕がDJを始めた時代というのは、まだClubではなく、DISCOで…DJは曲をかけながらしゃべってるあの時代なんですよね。1978年だったかな…?
ayat1181:あ…懐かしいですね…DJさんがMCしながら曲かけてるというのは…
高橋透:ええ、だから、今の様に曲だけかけられれば良いというのではなく、しゃべりも上手くないとDJをできない時代でした。今では考えられないでしょ?
ayat1181:そうですね、今はそういうDJスタイルはめっきり減りましたし。
高橋透:まあ、DJを始めるまでにもいろいろありまして…僕は実家が長野県の山奥の方なんですけど、DISCOがかろうじて一軒あったものの、そこはDJがいるDISCOではなくて、ジュークBOXが設置されていて、当時流行のソウルミュージックが流れているお店でした。
ayat1181:ジュークBOX!懐かしいですね…これも最近見なくなりました。
高橋透:そのお店には高校時代から行ってましたねえ…で、高校卒業と同時に上京しまして…その頃は歌舞伎町に30〜40軒のDISCOがありました。もうDISCO全盛期でしたね。
ayat1181:へえ〜…今新宿にはClubが数軒しかないのに…そんな時代もあったんですね?
高橋透:ええ、そんな時代もあったんです。で、上京して間もなく、DISCOで店員のアルバイトをしまして、DJブースからかかる曲をただひたすらメモする日々でした。今と違って昔はそういった地道な下積み時代を経てやっとDJになれたんですね。
ayat1181:そういえば前々回のNORIさんも第二回目のMOCHIZUKIさんも同じ事をおっしゃっていました。
高橋透:そういう時代だったんですね。で、店員のアルバイトをしながら六本木のDISCOへも遊びに行くようになり、そのつながりで横須賀に店を出すから手伝ってほしいといわれまして…僕は横須賀へ行ったんです。
ayat1181:その横須賀のDISCOはどんなお店だったんでしょうか?
高橋透:小さなお店でしたよ。ウェイター1人、DJ一人、バーテンダー1人にママの4人で店を回していました。DJは店員の3人で交代制で行っていました、僕のDJの原点は横須賀なんです。
ayat1181:あの、さっきしゃべりもできないとDJはできないとおっしゃってましたが、高橋さんはそのDJのしゃべりをどこで覚えたのでしょうか?
高橋透:それが、完全に独学なんですよ。しゃべりは米軍の極東放送局「FEN」のドン・トレーシのMCが教科書でした。。私も毎週聞いてましたが、多少誇張した英語の発音とクールな言い回しが、とてもカッコよくて。日本人だと小林克也さんですね。1981年にスタートしたテレビ朝日の深夜番組『ベストヒットUSA』で司会をしてた方です。
ayat1181:小林克也さんは喋りがネイティブでリスナーの中には日本人だと気づかなかった方もいらっしゃるそうですね?
高橋透:そうなんです!あの日本人離れしたネイティブな発音に憧れまして、僕は彼の英語やMCをよくマネしていましたよ。
ayat1181:ところで、DISCO時代を経てどうして高橋さんはHOUSEという音楽に魅力を感じたのでしょうか?
高橋透:僕がDISCOでDJをしている時代、その頃はまだHOUSEというジャンルはありませんでした。SOULテイストのDISCOミュージックが多かったのですが…僕は80年に一度ニューヨークへ住み、85年にニューヨークへDJレストランの“FUJIYAMA MAMA”の立ち上げに参加するために再びニューヨークへ移住したんですけど、そのときにラリー・レバンというDJに出会ったのです。
ayat1181:うわ、来た!ラリー・レバン!
高橋透:(笑)そうです。この2度目の移住の時にパラダイスガラージというDISCOに通い始めたんです。ここは黒人のゲイDISCOで、ちょうどシカゴからHOUSEミュージックが入ってきた頃だったかなあ…まさに「踊るための音楽」で、そのときDJをしていたラリー・レバンのカッコよさに憧れてたんですよね。僕のHOUSEの原点はここです。
ayat1181:なるほど…高橋さんにとってラリー・レバンさんはどんな存在ですか?
高橋透:僕がきっと永遠に目標とするDJですね。今現在は目標にしているDJは居ないんです。僕の中で憧れの対象となるDJも、目標の対象となるDJも、ラリー・レバンだけです。彼が生きている頃からずっと目標にしていましたから。それはずっと変わりません
ayat1181:そこまで高橋さんがラリー・レバンさんに憧れるのはどうしてですか?
高橋透:彼はね、音楽で人をコントロールすることがとても上手なんです。とにかくお客さんを躍らせる事が上手。お店の中に居るお客さんを「踊りたくなる選曲」をするのです。そういったベースラインや雰囲気作りをコントロールするのが非常に上手いんですよね。
ayat1181:へえー!…私も一度彼のDJを生で聴いてみたかったです。
高橋透:それね、みんなに言われます(笑)世界的に伝説となったDJですからね。
ayat1181:そんな高橋さんですが、今までDJをやっていて良かったと思えた事を教えてほしいです。
高橋透:良かったこと…うーん…その質問はいろんな解釈ができて…返答が非常に難しいですね…。うーん…なんだろう…うーん……難しいなあ(笑)
ayat1181:そんなに具体的なエピソードじゃなくても、ざっくりでいいですよ。
高橋透:そうですか?…DJやってる醍醐味って、やっぱり自分のかけた音楽で人が踊ってくれる事だと思うんですよね。けど、それって実はとても難しくて、自分の思惑や読みがそのままフロアに反映されると本当に嬉しいですね。自分とお客さんで意思の疎通ができたみたいで…DJやってて良かったと思える瞬間はまさにこの瞬間ですよ。
ayat1181:なるほど…そういう気分ってDJを実際にやってみないと味わえませんものね。
高橋透:そうなんですよ。お客さんが笑顔になって踊っているのを見ると本当に嬉しいですよ。…でもね、DJをやるというのもなかなか大変で、実際にデメリットとかもありますよ。
ayat1181:デメリット!それは是非聞きたいです。
高橋透:まず、5万と居るDJの中で、DJのみで食べていける人はいないに等しいです。とても華やかな世界に見えますが、生き残りも厳しく、DJのみを生業として生計を立てていくのは至難の業ですよ。それなりのギャラを貰っている人はほんの一握りです。
ayat1181:うわー…厳しい厳しいとは聞いていましたが…
高橋透:人気商売なところもありますし、「この人に来てほしい」とオーガナイザーさんに思ってもらえるDJにならなくてはいけませんし。長い間人気を保たなきゃいけないのもそれはもう大変なことなんですよ。ギャラを貰ったとしても音源を買わないといけませんし…下手したらマイナスの時もあります。本当に好きじゃないと続けていけないと思いますよ。
ayat1181:なるほど…。
高橋透:レコード買ったらメシが食えない。でもレコードを買わないとDJができない。そういう状況ですからねえ…。しかし…今の時代は音楽ジャンルが多すぎて大変ですね。
ayat1181:高橋さんがDJを始めた頃はどうでしたか?
高橋透:少なかったですね。今みたいに細分化される前でしたし。今はHOUSEと一言に言ってもHOUSEにもいろいろあって、僕の中では4つ打ちであれば全部HOUSEという括りと考えているので、僕にとってはTECHNOもHOUSE。4つ打ちのものは全部ひっくるめてHOUSEという概念があります。昨今細分化されていくHOUSEですが、HOUSEはHOUSE。あんまり細かく分類しないです。
ayat1181:そうですね、最近HOUSEと言っても色々ありすぎて…今の時代のHOUSEを高橋さんはどう思いますか?
高橋透:うーん…成熟し切っちゃってて、もう次の時代に入っているのかもしれませんね。そろそろ音の出尽くしてきたところで、原点回帰じゃないですけど、細分化されたジャンルがまたくっついて、くっついて…硬い音?柔らかい音?そういったざっくりっした分け方になっていると思います。
ayat1181:う…深いです…私にはさっぱりわかりません…でも、高橋さんは着眼点がさすがに別のところを見据えている感じでその一言にとても重みがあります。
高橋透:もう今後はあんまり大きな波は来ないんじゃないかなって思います。今現時点では…ということで、これから何年か先には今日とはまた別の事を感じているかもしれませんが。何十年かして…今の2008年がHOUSEの歴史として語られる頃、「2000年以降はジャンル細分化時代だった」って語られるのかな?(笑)
ayat1181:そうですね…何十年後かに今のこの2008年がどう語られるんでしょうか…。あ、ところで高橋さん…最近のDJ機材のデジタル化についてはどう感じていますか?
高橋透:え?いいと思いますよ。
ayat1181:はあ〜…なるほど…いや、度々このインタビューでDJデジタル化の話題が挙がるものですから、高橋さんはどう感じていらっしゃるかな?と思いまして…
高橋透:ヨーロッパのDJはほとんどがPCDJですね。文化の違いもあるんでしょうけど、便利なものはどんどん取り入れるべきだと思います。やっぱり音の良さで言えば僕はアナログの方が好きですよ。だけど、便利さではPCDJには勝てません。
ayat1181:移動の時とかPCDJだと便利そうですよね。
高橋透:そうなんですよ。やっぱりツアーなんかで全国、世界各国を回るDJはPCDJは理にかなってます。大きなレコードバッグを引かなくてもいいし。PCDJはね、BPMもあわせてくれるし、きれいにMIXもできるんですよ。レコードを買わなくても音楽をインターネットからダウンロードするので、かさばらなくていいですね。
ayat1181:なるほど…でも個人的にはちょっと味気ない気もします。
高橋透:そうですね。PCDJの欠点はアナログでできるようなオリジナリティが出せないところです。DJっていうのはMIXをキレイにするのが目的じゃなく、お客さんを躍らせ、高揚させることが大事です。テンポがズレても盛り上がることもありますよ。決してきれいじゃなきゃいけないということはないんです。
ayat1181:ああ…高橋さんにそう言って頂けると、全国の若手DJさんたちはきっと大きな励みになると思います。
高橋透:DJは選曲1番、MIXは2番です。途中で針が飛んじゃったりするのもご愛嬌ですよ。ラリーの音源テープを聴くとわかりますが、彼もMIXでミスをしたり、テンポがズレたりなんてことはしょっちゅうありました。だけど現場は盛り上がってるんです。盛り上がらせることがDJにとって最重要ですから、テクニックは2番目でいいんじゃないかな?って思います。でも、利便性で考えたらPCDJは素晴らしいですから、自分自身に合ったツールをそれぞれ選んで使えば良いと思いますよ。僕はアナログが好きだけどね。
ayat1181:そうですね、私もアナログでのパフォーマンスの方がお客さん目線から見てて見栄えもして好きです。
高橋透:ああ…でも、どうだろう…?ラリーは今の時代生きてたらどうしてたかな?彼はとても新しいモノ好きだったから、きっとPCDJ使ってただろうなって思います。彼はエンジニア面でもサウンド面でも常に新しいことを模索しているような人だったからなあ。
ayat1181:え?何か今何気にすごい貴重なお話を気かするんですけど…
高橋透:あはは、彼はもうこの世には居ないので完全に僕の想像ですよ。
ayat1181:では…最後にこれからDJを始める人や若手のDJさん達へ、高橋さんからアドバイスをお願いします。
高橋透:うーん…アドバイスですか…前出の話題で大分言い尽くした感はありますが、要約すると「曲を覚える」「練習する」「空気を読む」の3つですね。
ayat1181:ではまず曲を覚えるところからお願いします。
高橋透:自分が好きなジャンル以外の音楽もとにかく幅広く聴くことです。引き出しを広げるという意味もありますが、とにかく偏った聴き方をしないで、音楽ならなんでもまず聴いてみることですね。大事です。
ayat1181:練習するというのはこれはもう言わずもがなという感じですね?
高橋透:そうですね。とにかく練習・練習です。ただ、自宅でDJをするのと現場でDJをするのは全然違います。僕の言う練習は自宅で練習するということでなく、現場に出て体当たりで練習をし、とにかく経験を積め…という事ですね。家でやっていることをそのままフロアに持って行ってもダメです。DJは常にフロアのお客さんとの「コール&レスポンス」。こればっかりは家ではつかめません。現場で経験を積むしかないのです。
ayat1181:うわ…なるほど…。それが最後の空気を読むという事につながってくるんですね?
高橋透:そうですね。要約して3つのことを話しましたが、すべて1つにつながっていくんです。…DJをやってる人ならみんな一度は経験したことあると思うんですけど、自分の前のDJの時は盛り上がってたのに、自分と代わってから急にフロアのテンションが下がってしまった…という…
ayat1181:ああ…それ何度かお客さんとして目撃したことがあります。切ないですよねえ…。
高橋透:最近若い子のDJを見ていて感じたことなんですけど、そこから立ち直れない子が多いです。そういった時はもう自分の世界観を捨てる勇気を持たないとダメです。そうなってくると自分のネタの引き出しの広さが必要になってきて、場数を踏んだ度胸に空気を読む眼力が必要になってきますね。さっき話した要約した3つが当てはまります。
ayat1181:おお…なるほど…
高橋透:DJは常に臨機応変。これはもう経験を積むしかありませんが、柔軟な考えで何でも取り入れるという姿勢を持ってほしいなって思います。あと、一番になりたいというハングリー精神と野心を持ってほしいな。そういう気持ちを持つことで、自分のやるべきことが自然に見えて来ると思いますよ。
ayat1181:なんか、もうそれはDJに限らず社会生活でも同じ事が言えそうですね。
高橋透:そうですね。…最近の子は技術や小手先のテクニックに走りがちなところがありますから、もっと大事な事があるという事を知ってほしいと思います。
ayat1181:いやー…今日は本当に貴重なお話をたくさん伺えました…高橋さん、本日はどうもありがとうございました。
高橋透:はい、どうもありがとうございました。aya_t1181の感想:
いやー…音源を聴かずして人柄ですっかりファンになってしまいました。
始終、感情論ではなく、理性的に一つ一つ丁寧に答えて下さり、
広い視野でこの業界を見据えていらっしゃる方なのだと感じました。
と、私が気安く語って良い様なお方ではないのですが…
知識の浅い私に対して1個1個「○○は知っていますか?」と確認しながら
お話を進めてくださり、高橋さんの優しさやお心遣いを随所に感じながら
とても有意義なお話を伺うことができました。










